#111 相続手続の流れ

相続税の納税は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内、相続放棄の選択は原則3カ月以内など、相続手続には期限が設けられているものがあります

相続が始まると相続人は急に忙しくなってしまいます。相続人の数や相続財産が多いと、手続は非常に煩雑かつ複雑になおそれもあります

今回はいざというときに備えるため、相続手続の流れを簡単におさらいしておきましょう

 

相続が開始したら、まず、①相続人の確定、②相続財産の確定、③遺言書の有無の確認 を行います

「①相続人の確定」は、具体的には被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍を取得して、相続人がだれなのかを確定します

「実は前妻との間に子がいた」「法定相続人となる人の行方が分からない」など、実際に調べ始めると思わぬことが判明し、手間がかかることがあります

 

「②相続財産の確定」は、被相続人が生前に伝えてくれていたとしても、改めて調べる必要があります

「ネットで株を買ったことを本人も忘れていた」「実は高額な骨董品を持っていた」など、相続人が把握していない財産が見つかることもあります

しかしこの手続には限界があることも理解しておきましょう。被相続人名義で所有する銀行や証券の口座について、どこかの機関に問合せをしたら漏れなく調査できる、というものではありません。現実には、被相続人の遺品を整理するなかで通帳が見つかった、とか、生前に本人から株を持っているという話を聞いた記憶があるなどの情報をもとに、個別的に金融機関に財産調査を申請することになりますが、申請自体に膨大な手間と時間がかかるため、実際にはある程度あたりをつけての調査にならざるを得なかったり、相続税申告後に遺産の存在が分かり、修正申告・納税が必要になったなどもよくあります。特に最近急増しているのが、故人が生前にパソコンを使って取引をしていたネット銀行・証券が相続手続からもれる事案です。このような取引は、通帳や取引報告などが紙ベースの現物ではなく、メールやデータとしてやりとりしている(つまり現物がない)ため、相続人がその財産の存在に気付かないことが増えているからです

 

③「遺言書の有無の確認」は、公正証書遺言であれば、最寄りの公証役場の遺言検索システムで調べることができます。一方で、自筆遺言書の場合は紛失等の危険性が存在しますので注意しましょう

 

以上を終えたら、遺産分割をします

・遺言書があればその内容に従って分割します

・遺言書がないときは相続人全員で遺産分割協議し、合意した内容を『遺産分割協議書』という書面にまとめます

 

その後、相続税の納税や実際の分割手続に入ります

不動産を相続するなら相続登記、預貯金や株式などを相続するなら名義変更や解約・払戻の手続などを行います

なお、相続放棄の選択期限は相続の開始があったことを知った時から原則3カ月以内ですので、相続放
棄の判断は、相続財産が確定した段階で早めにしたほうがよいでしょう。

相続手続は煩雑になりがちですから、可能な限り事前に準備しておくことが大切です。

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