#106 遺言書に有効期限はある?

遺言書なんて、そう何度も作り直すものではないと思っている方も多いかもしれません

もちろん、必要性がないのであれば、作り直しなど不要です。遺言書に「作成後〇〇まで有効」などという法律的な有効期限はありません

しかし、ずっと前に作った遺言書を見直しもせずそのまま放置するとトラブルになってしまうこともあるので注意が必要です

今回は、遺言書の見直しについて考えてみたいと思います

 

借金には時効が存在します。たとえば、お金を他人に貸したものの返済がない状況で、そのまま請求や差押などをせずそのまま一定期間が経つと、借主が時効を主張すると貸主の「返してくれ」という請求権が消滅してしまうことがあります。これが時効(消滅時効)です

 

一方、遺言書には消滅時効や有効期限はありません。書いた人が何年前に作成したとしてもずっと効力があります。ただし、以下のように制度的に遺言書が効力を失うケースも存在します

●何通も遺言書を作成したケース

遺言を書く人が何回も遺言書を作成した場合、従前の内容と抵触する部分については、最新の
ものが効力を持ち、それ以前に記載された抵触する部分は効力を失います

 

●保管期間経過後の公正証書遺言

公正証書遺言は公証役場で保管されるため、書き手にとって不本意な破棄や偽造のリスクがありません。しかし、公証役場での保管期限は法律では原則20年と決まっていますが、特別な事由(生存)により保存の必要があるときは保存義務があるので、公証役場によっては遺言者が120歳になる年齢まで保管されます。保管されていれば、紛失しても謄本の取得が可能ですが、保管期間経過後に紛失した場合は、その内容を証明することができなくなります

遺言書は、「書いた人が死亡した時から効力を生ずるもの」です。したがって、まだ効力のないものに、有効期限や時効といった概念を当てはめるのは、そもそもそぐわないといえます。100歳で亡くなった人が60歳の時に書いた遺言書であっても、民法の規定に則っていれば、遺言者の死亡の時から効力を生じます

 

ただ、いくら法律として有効であっても、古すぎる遺言書には実は問題が隠されていることがあります

弊所における実例では、見直しをしなかった遺言書がかえってトラブルに発展してしまったケースとして、

・遺産を渡す相手として指定した人が、遺言者の相続前に亡くなっていた、

・子に相続させると書いておいた預金を使ってしまった、

・遺言書作成後に取得した財産や遺言書に記載がない財産がある(遺産分割協議が必要となります)、

・遺留分に配慮をしない内容だった、

・遺言執行者を指定していなかった(遺言執行者に指定した人が、遺言者の相続前に亡くなっていた)、

・遺言書作成後に相続人の環境に変化(結婚・離婚、出産、不仲、養子の離縁、自宅の購入)が生じていた

 

遺言書を作成したら、数年ごとに見直しを行い、必要に応じて書きかえたほうがよいでしょう

なお、自宅での保管が不安な方には、次のような保管方法が利用できます

●法務局で保管してもらう(自筆証書に限る)

●公正証書遺言にして、公証役場で保管する

●弁護士・司法書士・信託銀行などの第三者に預ける

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