#36 現金や預金が、「名義預金」となるケース?~名義預金とは

毎年、相続税対策などのつもりで暦年贈与を実行していたのに、相続後に税務署から「名義預金」とみなされて相続財産に加えられてしまう、といったケースがあります

弊所も相続税申告の際に、ご依頼者である相続人等のみなさまとのヒアリングや通帳の調査などを通じて、相続人等としっかりと整理し、協議を行うところです

 

そもそも、「名義預金」とはどのようなものをいうのでしょうか?

また、現金や預金が「名義預金」とみなされるのはどのようなケースでしょうか?

 

□「名義預金」とは?

形式的には相続人等、被相続人以外の方の名義の口座(特に銀行口座、証券口座)であっても、実質的には被相続人が管理や運用を行っている預金を、通称として『名義預金』などと言います

他には、「名義借預金」、「他人名義預金」、「名義借財産」などと表現することもあります

(なお、形式的に他人名義を借用しただけの財産は、預貯金口座に限らず、証券口座、保険契約、不動産や自動車などにも当てはまる概念ですが、今回は特に税務調査にて申告漏れを指摘されることの多い預貯金を対象としています)

 

名義預金と該当すると、たとえ形式的に相続人に贈与したような外観を呈していたとしても、実質的に被相続人の支配の中にあるため、結果として相続税の課税される遺産に含まれます

 

□「名義預金」になる条件は?

預貯金等の帰属に係る判決(平成21年4月16日東京高裁)によると

名義預金について、以下の基準を総合考慮して判断するのが相当であるとしました

●当該財産またはその購入原資の出捐者
●当該財産の管理及び運用の状況
●当該財産から生じる利益の帰属者
●被相続人と当該財産の名義人ならびに当該財産の管理及び運用をする者との関係
●当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯
●贈与の事実の有無

 

実務の面では要は実質判断を行う、ということになってしまいますが、

重要なポイントの一つとして「口座の管理運用者」が誰だったのか、という点が挙げられます

 

“その預金を支配・管理しているのは誰か”ということです

預金管理者によってどう判断が変わるのか、事例を元に簡単にご説明します

 

(1)財産をもらう人が口座を管理している

贈与であることを受贈者もきちんと認識しており、財産の管理運用もその本人が行っている場合では、受贈者への贈与が成立していると判断される可能性が高くなります(つまり名義預金ではないため、相続税の課税される遺産にはなりません)

 

祖父母が、良かれと思い、生まれたばかりの孫名義の口座に、勝手に入金をし、その通帳や届出印を祖父母が保管・管理しているような場合は、贈与の成立が肯定できず、「名義預金」と指摘される可能性があるでしょう

 

(2)口座を作成後途中で通帳を渡された

この場合も贈与となる可能性の高いケースでしょう。実際にあった事例では、途中から生前に被相続人から通帳の手渡しをうけ相続人が預金を使用していたことから、裁判所は相続財産とはいえないと判断したことがあります

 

(3)被相続人が口座を管理している

口座名義人が贈与の事実を認識していなかったり、場合によってはその口座の存在自体を認識していないような場合には、贈与を肯定することはできず、よって名義預金と判断されることになるでしょう

 

名義預金は「知らなかった」では済まされません。意図的に名義預金を作って申告から除外していた場合には、税務当局から故意に事実を仮装・隠ぺいした、などと判断される危険性もあります

 

相続税対策等として、せっかく生前贈与をしていたのに、死後になってそのすべてが否認されてしまうようではとても残念です。専門家のアドバイスなどを受けながら、効果のある対策を実行しましょう

 

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