#38 事業承継成功のために 〜事業承継税制はどのような改正に?〜

平成30年度税制改正において、事業承継税制に抜本的な見直しが行われました

具体的にどのような点が変わったのかを簡単にご説明いたします

□改正前との相違点

事業承継税制は平成21年度の税制改正で創設されました。あわせて関連法の新設なども同時に行われました。高い技術力を有する中小企業が多いわが国において「円滑な事業承継の実現」は、まさにわが国経済の維持・成長の重要なキーポイントであるとして、税制面からも対策が講じられたところです。しかし事業承継税制は結果として通算で2000件ほどしか利用されませんでした。利用が伸びなかった原因の一つとして、雇用維持(※1)などの自らコントロールすることが難しい要件等を仮に満たさなくなった場合には、納税を猶予されている税を利子税と合わせて納付しなければならない、というリスクがあります。この「適用の打ち切りリスク」の顕在化による影響があまりに大きく、そのことが利用を断念する大きな支障となっていたようです

※1 雇用維持要件とは、相続税・贈与税の申告期限後5年を経過した時に5年間の平均80%の雇用を維持していないと猶予が取り消されるというものです

 

新・事業承継税制では適用要件が大きく緩和されました。次から改正前との相違点を3つのポイントでご紹介します

 

<ポイント1>対象株式数の上限を撤廃、納税猶予の割合を100%に拡大

従来は株式の一部が対象でしたが、今改正ではすべてが対象となり、また納税猶予の割合も100%になりました

 

<ポイント2>対象者の範囲拡大

従来は贈与者等について改正前は先代経営者からの分しか対象になりませんでしたが、今回改正では先代経営者以外の者からの贈与等も対象になりました。例えば、先代経営者の配偶者や兄弟が株式を持っている場合に、配偶者や兄弟が有する株式も対象になります

 

また、改正前は後継者を1名に絞り込む必要がありましたが、改正後は最大3名まで認められることになりました。複数人で承継する場合は、発行済株式総数の10%以上を有する上位3名までの同族関係者が対
象になります。これにより後継者集団による経営体制を構築することなどができます

 

<ポイント3>税額の再計算

事後要件を満たさなくなった場合には猶予されていた税額を納付する必要があります。しかし現実には、会社の財務状態が悪化した結果として要件を満たさなくなることが多いと思います

改正前は、それでも納税猶予額の納付が必要でした。

それが改正により、経営悪化事由が生じた場合には、特例の適用が可能であれば税額の再計算ができることになりました(申告期限から5年『特例承継期間』経過以降の事由発生に限られます)

 

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