#22 相続にまつわる税金は不動産しだい?
高齢大国ニッポンの日常風景と化した高齢者の一人暮らし。今はまだ元気だからいいけど、もしもの時に
どうしたら?
今回は、相続した自宅の売却をテーマに、2016年の税制改正大網で創設された『小規模宅地 の特例』について遺言書の有無も含めた事例をご紹介します
■ 関係者の状況によって、効果的な贈与方法は変わる
『小規模宅地の特例』とは、居住用の宅地(自宅など)等について、一定の要件を満たす場合には、その評価が最大で8割減になる制度です。
居住用宅地の場合の対象は、
①配偶者、
②同居していた親族、
③親に①②にあたる者がいない場合に限り、持ち家のない親族(子や孫など)
となります。
たとえば高齢の夫婦の一方が亡くなった場合、
相続人が配偶者と息子(非同居)だけだった場合は、①のケースに該当し、
配偶者が相続すれば330㎡まで80%減額できます。
しかし、今回のケースは父親が既に亡くなっており、母親がひとりで住んでいます。
この場合、息子が持ち家に住んでいると、この特例は使えません。
仮にそういった形で息子が自宅を相続すると8割減特例を受けられず、
相続税は大きくはね上がります。
そこで別居している息子の子、つまり孫にまだ持ち家がなければ、孫を養子にするか遺贈することで、
③に該当するため、8割減特例の対象となるのです。
ただし、今回のケースでは、残念ながら独居で高齢の母親は遺言を残さず他界してしまい、この特例は受けられませんでした
■ 自宅の耐震基準はよく確認しておこう
さて、少し話は変わりますが、
このAさんの自宅は既に築35年以上経過しており、相続人の息子も今後の維持費を考え売却も視野に入れ
ていました。
そこで次に登場するのが、
空き家に係る3000万円の特別控除に関する特例です。
これは、2016年税制改正大網で創設された特例で、
相続した旧耐震基準の家屋を、耐震改修して売却するか、解体し更 地にして売却する場合に、
譲渡所得から3,000万円の特別控除を受けられる、という特例です。
自宅は旧耐震基準で建てられており、平成31年12月31日までに売却すれば、特別控除を受けられるため、最終的に息子は特例によって約600万円ほど節約することができました。
こうした特例の背景には空き家が多くなっている現実があります。
そのほか、空き家に関するものとして、2015年に施行された『空き家対策特別措置法』があります。
この法律では、危険な空き家を放置しておくと固定資産がはね上がる仕組みになっています。
いざというときのためにも、遺言と不動産は見直しておくのが最善です。