#117 早めに準備を!相続税の納税

相続税の申告・納付は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内にしなければなりません

相続税は納税額が大きくなりがちです。ここで相続税は現金で一括で支払のが基本になりますので、実際には支払いたくでも支払えない、というケースもあります

相続税の申告書は期限内に提出していても、納税を行わずに未払のままにしてしまうと延滞税などのペナルティが課せられます。そこで今回は、納税の準備の大切さについて、改めて確認したいと思います

 

相続税が未納になる理由として、意外とよくあるのが、「支払えない」、というケースです

 

たとえば、相続財産のうち不動産が多くを占める場合、税額は高くなったものの、それを支払えるほどの流動性の高い現預金や有価証券などの金融資産が手元にない、ということがあり得ます

この場合、相続不動産を売却して納税資金に充てる、という方法をとることも考えられます。しかし納付期限までに売却が完了できないこともあります。「私に万が一のときのときは、この土地を売って納税に充てなさい」という方針を伝えているから安心だ、という方やそのご親族の話をよく聞きます。しかし、相続が起きたらすぐに不動産を売りに出す(出せる)、という状況の方はむしろレアケースといえ、葬儀や法要、お悔やみが終わった後に戸籍収集などの資料を収集し、遺産分割協議を行い、それらを用いて不動産の名義変更を行って、ようやく売却が可能になります。10カ月という期間は、意外にあっと言う間に過ぎてしまいますので、残り時間のない状況で、売り急いで現金化せざるをえなかった、という状況は回避したいものです

 

中小企業オーナーの相続によくあるケースとしては、相続財産に含まれる当該中小企業の株価が想定外に高く、その結果納税額も高くなってしまった、という例です。納税に充てるために非上場である中小企業の株を売却して現金化する、というのは、様々な理由で現実的ではないことがとても多いです

 

このほか、相続した預貯金が納税に足りている、と安心していた方でも、遺産分割協議が思ったより難航し、被相続人の預金口座が凍結されたままになり支払えない、というケースもあります

 

いずれにしても、相続税を納付期限までに納められなかった場合、延滞税を課せられることになります

延滞税は、納付期限の翌日から2カ月は年7%か延滞税特例基準割合+1%のどちらか低い方、2カ月以降は14.6%と延滞税特例基準割合+7.3%のどちらか低い方、となります

そもそもの本税が高額になりがちであるだけでなく、延滞税のパーセントも近年の金利水準と比べても高い水準といえるため、延滞税も高額になることがあります(延滞税特例基準割合は毎年変動します)

 

さらに、申告自体が期限までに間に合わなかった場合は、無申告加算税(5〜20%)が、申告した相続税額が不足していた場合には過少申告加算税(5〜15%)が課せられます

正当な理由がある場合などには不適用となることもありますが、うっかり申告し忘れた場合や、正しく申告したつもりで金額が足りなかった場合でも、これらの加算税は課せられるので注意しましょう

なお、相続財産を隠ぺいするなど悪質なケースでは、無申告加算税や過少申告加算税の代わりに重加算税(35〜40%)が課せられます

 

相続財産が多いほど相続税は高くなり、滞納した場合のペナルティも大きくなります

ペナルティなどの不利益を避けるためには、事前に相続財産を洗い出して相続税を試算したうえで、納税資金が足りているか、実際に納税が可能か、などの「納税資金対策」を相続対策のひとつとして準備としておきましょう

 

■納税資金の確保

納税資金を確保する際に役立つのが生命保険の利用です。相続人を死亡保険金の受取人に指定しておけば、保険金を相続税の納税に充てることができ、万が一のときにも安心です

 

■相続税の節税

そもそもでどれくらいの相続税が予想されるのか、という現状をまず把握しましょう。そのうえで、相続税自体が各種特例や対策などで節約できないのか、を考えてみましょう。たとえば、生前贈与を活用すれば相続発生時に課税される財産を減らすことができます。

 

事前に対策をしても何らかの事情で支払えない場合は「延納」という選択肢もあります

延納とは相続税を一括で納付することが困難な場合に、税務署に申請して分割払いにできる制度です。ただし、一定の条件を満たす必要があります

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