#64 相続の手続を円滑にする「遺言執行者」のメリットと注意点

遺言書がある場合でも、相続人の数が多い場合や相続人同士が不仲な場合など、円滑に相続手続が進まないであろうことが早い段階からわかっている場合の対策として、親族や専門家を「遺言執行者」に選任する方法があります。今回は「遺言執行者」を選任するメリットや注意点について簡単に紹介します

 

□遺言執行者のメリットと選任が必要となるケースとは?

遺言執行者とは簡単にいうと『遺言の内容を実現する人』のことです

たとえば『長女に預金を相続させる』などと遺言書で指定していたとしても、実際に金融機関で手続を行うときには相続人全員の印鑑証明書が必要になるなど他の相続人の協力が必要になります

あらかじめ遺言執行者を選任しておけば、遺言執行者は他の相続人から印鑑証明書を提出を求める必要なく基本的な相続手続を進めることができることから、スムーズに財産承継ができると、いうメリットがあります

 

遺言執行者は必ずしも選任しなければならないわけではありません。しかし遺言書のなかで子の認知が行われた場合や、相続人の廃除・廃除の取消が行われている場合には、遺言執行者を選任しなければなりません

 

もし遺言書のなかで遺言執行者が選任されていない場合には、家庭裁判所で選任することができます

 

□親族・専門家を「遺言執行者」に選定した場合のメリットと注意点

遺言執行者は長男や配偶者などの推定相続人や親族に依頼するケース、弁護士・司法書士・税理士といった専門家に依頼するケースがあります

 

●親族を選定したときのメリットと注意点

事情を知っている親族を遺言執行者に選定すれば、段取りが円滑に進むというメリットがあります

ただし相続財産が多い場合は手続が煩雑になるため負担が大きいことや、ほかの相続人とのやり取りで精神的に疲弊する可能性も懸念されます

 

●専門家に依頼したときのメリットと注意点

専門家に依頼することで、専門家は仕事として遺言執行者の職務を遂行してくれますから、相続人の手間は著しく軽減するとともに、質の高い業務を確実に遂行してくれるでしょう。これが最大のメリットです

ただし、被相続人が相続人に相談せずに遺言執行者を選任している場合は相続人との間でトラブルになる可能性もあります。また、有資格者がすべて遺言執行に適している専門家というわけではありません。相続を専門としていない有資格者が選任されている場合に提供される業務の品質の低さの懸念されます。

また専門家の業務報酬について、不相当に高額であったり、相続人の理解が得られないなどのトラブルも起こりえます

 

弊所でも相続後の手続の依頼を受けた案件のなかに遺言書が遺されている事案も多くありますが、

・そもそも遺言執行者が選任されていない、

・遺言執行者に親族が選任されている、

・遺言執行者に士業が選任されている、

のいずれでも事案ごとに様々なトラブルも生じており、一概にどれが最適とは言えません。

円満相続を望んでせっかく遺した遺言書が、かえって相続人間のトラブルを招くことになってしまった、という不本意な事態を招かないためにも、専門家を交えてしっかり相談・検討することをお勧めします

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