#113 相続時精算課税制度 その特徴と注意点

□財産をまとめて贈与したいなら「相続時精算課税制度」が有利?

相続対策としてよく行われるのが生前贈与です。特に年間110万円までの贈与なら非課税となる暦年課税制度を利用しての生前贈与は、多くの人に利用されています

相続や贈与に関係する税制度において、暦年課税制度と併せて知っておきたいのが「相続時精算課税制度」です

相続時精算課税とは、簡単に説明しますと、最大2500万円までの贈与が非課税となり、相続が開始したときにはその贈与財産とほかの相続財産をあわせて相続税を課税するという制度です

適用対象は、贈与者は贈与の年の1月1日時点において60歳以上の父母・祖父母であること、受贈者が贈与の年の1月1日時点において20歳以上の子・孫であること、などが利用の際の必要な条件となっています

 

生前の贈与に関して、贈与者一人あたり累計2500万円まで特別控除が認められ、贈与回数に制限はありません

たとえば、両親が二人の子にそれぞれに2500万円ずつを贈与したとき、相続時精算課税の制度を使えば、各2500万円に対して子は贈与年度において贈与を納税する必要はありません。そのため、値上がりが予想される財産を所有している人が、生前に財産を贈与しておきたいときなどには、有効な財産移転の方法として利用することもできるでしょう

 

相続時精算課税の制度を使うときには、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍謄本などの書類とともに、贈与税の申告書に添付して提出する必要があります

 

□相続時精算課税制度を利用する際には、どのようなことに注意すべき?

相続時精算課税の制度は、一度利用すると贈与者が亡くなるまで継続して適用され、暦年課税に戻ることはできなくなります

『小規模宅地等の特例』との併用ができないことにも注意が必要です。相続する予定の財産に不動産が含まれる場合、相続時精算課税による生前贈与を行うと税額的に不利にならないかの事前検討も必要でしょう。

不動産に関しては、直系尊属である両親・祖父母などから、住宅取得資金として贈与を受けた場合に一定の金額が非課税となる「住宅取得資金贈与の非課税の特例」という制度もあります。相続時精算課税との併用が可能です

 

そもそも贈与税は、個人が贈与により取得した財産に課される税金です。生前に贈与することで相続税を軽減させようとしても、相続時精算課税による贈与財産は相続財産に加算されるため、直接的な相続税の節税効果は生じないということに注意が必要です。

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