#103 ローン返済中の親が亡くなったら残債は相続人が支払う?

子が親の財産を相続するとき、相続財産のなかに自宅や投資アパートなどの不動産が含まれていることはよくあります

ではその不動産を購入・建築するため被相続人が金融機関から借入を行っていて、相続がおきた際に残債があった場合、相続人である子はその借入金の返済義務を引き継ぐことになるのでしょうか

今回は、住宅ローンが残った不動産の相続について簡単に解説します

 

相続財産には、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払の税金などのマイナスの財産も含まれます。そのため被相続人に住宅ローンの残債があった場合、それも当然に相続の対象となり、相続人が返済の義務を負うことになります

被相続人の返済期間などにもよりますが、相続した時点でまだ多額の借金が残っていることもあります。もし相続人自身に自分にも自宅の住宅ローンがあったうえで、被相続人の住宅ローンも相続するとなると、月々の支払金額はかなり大きな負担となってしまいます

 

■住宅ローンの残債がある場合「団信」の加入の有無をチェック!

相続において、住宅ローンの残債を必ずしも相続人が支払わなければならないわけではありません

被相続人が住宅ローンを組むときに『団体信用生命保険』(以下、団信)に加入していれば、相続がおきた時点での残りの住宅ローンはなくなるので返済が不要になることがあるからです

団信とは、債務者が返済の途中で死亡または高度障害状態などの一定の状況に陥ったときに、保険金で住宅ローンの残債が完済されるという保険です

多くの金融機関では、団信に加入することを住宅ローンの契約条件に含めており、住宅ローンを組んでいる人のうち95%以上は加入しているといわれています。被相続人が団信に加入していれば、遺族は住宅ローン返済の負担を負うことなく不動産を相続することができます

住宅ローン残債のある不動産を相続することになったら、まずは被相続人が団信に加入していたかを確認することが大切です

 

被相続人が団信に加入していた場合、住宅ローンを借り入れている金融機関に対して必要書類を揃えて、保険金支払の手続きを行います。保険金が支払われたら、住宅ローンは完済により消滅するため、当該金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類が発行されます。相続人は当該抵当権抹消登記を行います
もし被相続人が団信に加入しておらず、住宅ローンを相続人が相続する場合には、相続人が住宅ローンを引き継ぐ手続を行い、不動産についている抵当権の変更登記をすることになります

上記、抵当権の抹消登記や変更登記の前提として、不動産の相続による所有権移転登記が必要となるので、その準備もしておくことが望ましいでしょう

(被担保債権の消滅が団信によるものに限られるものではないですが)

なお、実務としてよく見かけるケースとして、過去に団信や完済等により住宅ローンが消滅しているにもかかわらず、抵当権抹消登記をせずにそのまま放置し、その後その本人の相続人が抵当権抹消登記を申請する際には金融機関から発行された抵当権抹消用の書類を紛失してしまっていて、改めて金融機関の書類の再発行手続を依頼しなければならなくなるなどの想定外の手間や負担が生じている方が多いため、住宅ローンが消滅した場合には抵当権抹消の手続はめんどくさがらずできるだけ早めに着手することをお勧めします

 

住宅ローン残債のようなマイナスの財産を相続したくない場合には、「相続放棄」をするという選択肢もあります

しかし相続放棄は「一切の財産の相続権を放棄する」ということを意味するため、不動産を含めたプラスの財産も一切相続できなくなります。特定のマイナス財産だけ放棄して、プラス財産は相続する、というような都合のよい相続はできません

相続放棄を検討する際には、相続財産をトータルで見て判断することが必要となってくるでしょう

なお、団信は、住宅ローン以外の借入金や事業性の融資などには適用がありませんのでご注意ください

相続財産に不動産が含まれるときには、住宅ローンの残債があるか・どれくらいあるか、団信に加入しているか、を事前に確認しておくことが大切です

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