#102 「配偶者居住権」の上手な活用
残された配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた場合に、被相続人が亡くなった後も安心して自宅に住み続けられる権利である『配偶者居住権』
これは、残された配偶者がいままで通りの生活を送れるようにするための方策の一環ですが、相続税の節税手段としても使えることがあります
今回は、配偶者居住権と節税の関係について簡単にご紹介します
配偶者居住権は、被相続人が所有していた自宅に、被相続人が亡くなった後も配偶者が一定期間、または生涯にわたって住み続けられる権利のことです
民法改正によって、所有権と配偶者居住権を分けて相続することができるようになったため、自宅の所有権が子や親戚などの第三者に渡ってしまっても、配偶者は住み慣れた住居に引き続き住むことができます
この配偶者居住権が相続税の節税になるといわれることがありますが、具体的には二次相続を行う場合です
父親が亡くなり母親と子が相続人となった後、母親が亡くなって子が母親の財産を相続するとした場合、
まず、仮に評価額が1億円の自宅について、最初の相続のときに母親が配偶者居住権として3000万円分、子が所有権として7000万円分を相続したとします
このとき、配偶者は配偶者軽減規定として1億6000万円までは非課税となるため、相続税がかかるのは子の7000万円についてです
そして、その母親が亡くなると二次相続となります
配偶者居住権を取得していた場合は、配偶者であった母が亡くなることで権利そのものが消滅するだけのため、3000万円を子が相続することはなく、相続税も課税されません
不動産にかかる相続税の特例として、『小規模宅地等の特例』が有名ですが、これは原則として配偶者または同居親族が使える特例であり、すでに自立して持ち家のある子は一次相続では適用されません
しかし二次相続については、別居であっても、持ち家ではなく賃貸で暮らしている子なら、一定の要件を満たせばいわゆる「家なき子」として特例の適用を受けることができます。
節税につながりやすい配偶者居住権ですが、不動産の評価額や相続財産の額などによっては、配偶者居住権を設定せずに小規模宅地等の特例を活用した方が節税になることがあります。また、配偶者の保有財産の額によっても、一次相続と二次相続のどちらが税負担が多くなるのかが異なります
そういった面から、節税のことばかり考えてしまいそうですが、配偶者居住権はあくまで配偶者が老後
安心して暮らせるためにあるということも忘れてはいけません
配偶者がいて自宅を保有している人は、専門家に相談するなどして配偶者居住権についても検討しておきましょう