#101 法定後見制度と資産運用
もし認知症になってしまったら、贈与や売買などができなくなってしまいます
家族が認知症になった場合に、成年後見制度を利用する人も多くいますが、資産運用しながら成年後見制度を活用するのはなかなか難しいといえます。そこで今回は、資産運用と成年後見制度の注意点について説明します
※法律上の後見には、法定後見と任意後見がありますが、ここでは法定後見について記載します
DC(確定拠出年金制度)などの私的年金制度が拡充され、ただ単に貯蓄するだけではなく、まとまった資産をもとに投資信託を購入するなど、積極的に資産運用をしながら老後の資金を増やそうとする人も多くなってきました。なかには、本を減らさずに資産を運用し、そこで得た利益から自身にかかる医療費などを出してほしいと考えている人もいるかもしれません
資産運用をするときに重要なのは、まめにリバランスをすることです。できるだけ損失を最小限に抑えるために、売買や解約を繰り返して資産を増やすこともあるでしょう。しかし、万が一、保有者本人
が認知症になってしまった場合、売買や解約、譲渡などを行うことができなくなってしまいます。それ
は、高齢者が資産運用する際のリスクといえるかもしれません。
では、家庭裁判所で成年後見人が選任された場合に、資産運用は継続できるのでしょうか
成年後見人は、成年被後見人の財産を善良な管理者の注意をもって管理しなければなりません。成年後見人の主な役割として、成年被後見人の利益のために財産をしっかりと管理するが求められます
株式投資や投資信託は、通常の預金で得られる利息よりはるかによい配当や利回りが得られる可能性があるものです。しかしその一方で、元本割れのリスクもあります
裁判所の見解としては、成年被後見人の財産を積極的に増やすことではなく現状維持を基本として考えますし、もし元本割れして損失が出てしまった場合、本人の利益に反することになるため、成年後見人が成年被後見人の財産を使って積極的な投資を行うことは、原則的に認めていないのです
以上のことから、将来に備えるための資産運用であっても、成年後見制度の利用後では資産運用が継続できない場合があります。資産運用を視野に入れているのであれば、民事信託などほかの方法も検討しておくほうが賢明といえるかもしれません