#86 民事信託を活用した財産承継

民事信託とは、簡単にいうと、自身が財産の所有権を持ったまま、その管理や処分を信頼できる家族等に任せる制度です

生前に財産承継の形を作ることができる民事信託は、相続対策の手段の一つとして選ばれるようになってきました

最近ではNHKの番組で特集されたことなどから注目を集め、相談会やセミナーなどでもよくご質問を頂くようになりました

そこで今回は、民事信託の活用が期待される事例をいくつかご紹介したいと思います

 

■民事信託の活用例①『認知症対策』

もっとも身近な活用例がこの認知症対策だと思います

もし相続対策をしないままに認知症になってしまったとしたら、その人はもう不動産を売却することもできません

子や妻に遺言書を残すこともできませんし、

財産の生前贈与などの節税対策も難しくなってしまいます

 

ところで相続対策には昔からいくつかあります

まず遺言書を作成することです

これは本人が亡くならなければそもそも効力が発生しません

認知症になったからといって、所有する賃貸アパートの建替や特別修繕、売却などの権限を与えることができません

 

認知症への対策として後見人をつけることがあげられます

後見には契約による任意後見というかたちもありますが、いずれにせよ本人の判断能力が衰えてからしか効力が発生しません

また後見制度は被後見人の財産をしっかりと守ることが求められますから

いかに節税対策になったり、建て替えたほうが入居率が上がる等から経済的によい方策だったとしても

売却したり、資産の組替を行ったり、ましてや売却金の一部を生前贈与する、などの行為を後見人がすることはできず、限界があります

 

最も一般的な相続対策は生前贈与だと思います

相続税の節税対策の効果も認められます

しかし生前に渡してしまうので当然ですが贈与後はもはや自分でその財産を自由にすることはできなくなります

 

これらの点で、民事信託を利用すると

・自分が生きている間に管理だけは相続人等に任せ、財産から発生する利益は自分が受け取るということもできる、

・自分が認知症になったらその管理や処分の権利を信頼する推定相続人等に任せることができる、

・自分の死後の所有者の指定までも決めておくことができる、

などのメリットを受けることができます

 

 

■民事信託の活用例②『子どもがいない夫婦』

子がおらず両親も他界している人の場合、法定相続人は配偶者と兄弟(甥姪)になります

このとき、自分が先に死亡すると、親から受け継いだ土地や財産は配偶者と兄弟のもとに渡ります

さらに配偶者が死亡すると、配偶者の親族がこれを相続し、先祖代々受け継いだ財産が直系の親族のもとを離れることになります

これを回避する手段の一つとして民事信託を活用することがあげられます

信託契約のなかで、一次受益者を妻、妻の死後に受益者となるもの(二次受益者)を自分の親族と指定する方法があります

 

このように、民事信託は柔軟な財産管理を可能にする制度です

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