#56 配偶者に住む家を残したい!『配偶者居住権』とは?

住まいは、生活を営むうえで根本的な基盤となるものです。自分の死後も妻(または夫)には、安心して自宅に住み続けてほしいものです

しかし、遺産の大部分が自宅が占める場合に、配偶者が自宅を相続すると他の相続人の法定相続分を充たす分に不足が生じることから、結果として売却をして現金で遺産分割をせざるをえないケースがあります

また、配偶者が自宅を相続しても、預貯金などの金融資産をほかの相続人が相続したことで、配偶者の生活費や相続税の支払いに困り、結局は自宅を手放さなければならないというケースがあります

 

今回は、そういった問題を解決するために新設される『配偶者居住権』について簡単に解説します

 

□相続財産の大部分を自宅が占める場合に配偶者に起こりうるトラブル

相続財産のなかで自宅不動産の財産価値が最も高く、自宅以外の財産として少しの預貯金以外にめぼしいものがない、というケースも少なくありません

 

このような場合、相続の際にどのようなことが起こり得るのでしょうか?

 

まず、配偶者相続人が自宅を相続し、子など他の相続人が自宅以外の財産である預貯金を相続する場合、配偶者には今後の生活費に充てるべき金融資産が大きく減少してしまいます

また、預貯金が他の相続人の相続割合相当分に満たない場合などには、自宅を売って相続人間で分配するなんてことも起こりうるでしょう

さらには、相続税の支払は現金での一括納付が必要です。これを払うことができないのであれば、自宅などの不動産を売却するなどして納税資金を作り出さなければなりません

延納・物納という方法もありますが、いずれの場合も遺された配偶者は、今後の生活資金が不足
したり、住み慣れた家を手放す事態にもなりかねません

 

このような場合の配偶者の居住権を保護するために来年4月より施行が予定されているのが『配偶者居住権』です

これは簡単にいうと、不動産を、配偶者が死亡するまで住み続けられる『配偶者居住権』と、子などの他の相続人が居住権以外の所有権だけを持つ『負担付き所有権』との二つの権利に分ける制度です

 

□配偶者の負担が大きく軽減

たとえば、相続財産として資産価値5000万円の自宅と1000万円の預貯金があり、相続人は妻
と子1人というケースでは、

法定相続分によると、妻が3000万円、子が3000万円と計算されます

ここで妻が自宅を相続すると、子の相続分が2000万円足りなくなってしまうため、自宅を売却し税引後手取額+1000万円を法定相続分で分割することも起こり得ました

 

これに対し、

自宅を『配偶者居住権』(資産価値2200万円とする)と『負担付き所有権』(資産価値2800万円とする)に分けたとすると、

妻は配偶者居住権の2200万円と法定相続分との差額800万円を預金で受け取ることができれば、その後の生活の経済的不安を多少なりとも軽減することができるでしょう

このように配偶者居住権は配偶者にとってはメリットの大きい制度といえます

 

一方で、負担付き所有権を取得する相続人にとっては、所有権は持っていたとしても、配偶者が生きている間はその家に住むことも売りに出して現金化することもできず、さらに自分が得られる不動産以外の相続財産も減ってしまうため、結果としてトラブルの元になることも考えられます

配偶者長期居住権については、遺言書に書き残しておくだけでなく、しっかり話し合っておくことが必要でしょう

 

 

メールでのお問い合わせはこちら