#50 相続準備としての事業承継

中小企業庁が発表した2018年版『中小企業白書』によると、経営者の年齢層で最も多いのは“ 65歳~69歳”となっており、経営者の高齢化が進んでいることがわかります

経営者のなかには一代で起業して拡大した人も多く、その会社で自分の配偶者や子どもなどの親族も勤務していることもよくみられます。できれば自分の子どもに会社経営を承継させたいと考えている人も多いでしょう

今回は、わが子を含んだ親族に事業承継をする3つの方法をご紹介します

ちなみに事業承継には、株式の承継という法律上の側面と、経営ノウハウや取引先との関係性などの承継という経営上の側面の二面性がありますが、今回ご紹介するのは前者の法律上の側面についてです

 

(1)贈与による事業承継

経営者が「生前贈与」で後継者に株式を渡す方法です

自分が生きている間に事業承継が進んでいくため、安心して引退できるというメリットがあります

毎年一定額までの贈与が非課税になる『暦年贈与』制度を活用すれば、ある程度贈与税を抑えながら事業承継を進めることもできるでしょう

 

ただし、贈与財産を相続時の遺産分割に含む場合は、後継者以外の他の相続人から「後継者だけ特別に利益を得ている」などと思われて相続のときにもめたり、他の相続人から遺留分を請求されたりする可能性が出てきます

そのためこのケースでは、将来の相続を考慮に入れながら事業承継を進めていく必要があります

 

(2)相続による事業承継

経営者が「遺言書」を残すことによって後継者に株式を渡す方法です

税金面でいえば、相続税は贈与税に比べて基礎控除額が大きく、税率も低いため、税対策という面では生前贈与よりも適した方法といえます

 

一方、現経営者が生前から関係者にしっかり話し合っておかなければ、遺された相続人の間でもめ事に発展する可能性があります

たとえば、現経営者が事業に必要な資産を個人所有していた場合、それらが経営に関係のない相続人に相続されてしまうおそれがあります

また長男・二男が会社に入っている場合、どちらに(どれだけ)株式を相続させるのか。それぞれに考えや思いがあるでしょう。フタを開けてみたら考えていたことと違った…そんなことから相続争いが始まります

このほか遺留分の問題もあるため、現経営者が生きている間に、相続人を集めて事業承継について十分な話し合いをしておく必要があるでしょう

 

(3)売買による事業承継

遺留分と税金という2つの問題を解消できるのが、後継者に株式を買い取ってもらう方法でしょう

この方法であれば、贈与税・相続税ともにかかりませんし、遺留分の問題も発生しません

ただし、後継者としては株式を買い取るための資金が必要となりますし、

経営者側のほうは、株式売却による譲渡所得が発生した場合、譲渡所得に課税されるといった新たな検討課題が生じます

 

『贈与』『相続』『売買』のいずれの方法にもメリットとデメリットがあります

のちにトラブルに発展しないよう、後継者や相続人と話し合いながら、後悔のない事業承継を進めましょう

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