#26 収益力も贈与! 節税もできる築古アパートの贈与!?
家賃収入が安定しているアパートをお持ちであれば、子に贈与することで、節税しつつ、(贈与後の将来の)収益力を子に贈与することができます
特に、築年数の古いアパートであれば、建物の評価額が低いため、この効果は絶大です
今回は、親が子にアパートを贈与する場合の事例をもとに、その方法をご紹介します
■ 「土地」+「建物」を贈与すると、贈与税が高額に……
財産や不動産などを贈与する場合
『 (取得した財産額 – 基礎控除額110万円)× 税率 – 控除額 』の算式で納めるべき贈与税を算出します
仮に、Aさんが閑静な住宅地に築30年の木造2階建てアパートを所有しているとしましょう。そこでAさんは、昨年20歳を迎えた息子へこのアパートを贈与しようと考えています。
建物は80坪、土地は90坪
評価額は、建物が650万円、土地は6300万円、
受取家賃は、年額720万円とします
まずは、このアパートの土地・建物の両方を、Aさんに贈与する場合の贈与税を計算してみます。
前述の税率と控除額は、直系尊属から20歳以上の子や孫への特例税率を使用します
建物と土地の評価額の単純な合計額は、69 5 0万円
ただしアパートなどの貸家が立てられている土地は、店子さんの「借りる権利」「住む権利」を保護する必要があるため、地主さんといえども更地と同様の処分や取り扱いはできません
そのためアパート敷地は『貸家建付地』といい、更地の評価額から減額を受けることができます
今回は課税対象額が仮に5600万円になったとします
先の計算式により、贈与税は『2379万円』と算出されます。かなり高額になってしまいますね
2379万円 ← (5 600万円 – 基礎控除 110万円)× 税率 5 5 % – 控除額 6 4 0 万円
■ 「建物のみ」の贈与であれば、贈与税が少額になる!
次に、土地は贈与せず、建物だけを贈与した場合を考えてみます
今回の事例はアパートです。前の例と同様に店子さんの権利の制約があるため、『貸家』として、自宅等の自用家屋よりも減額して評価されます
仮に全室入居中だとすると、建物評価額は455万円になります
そうすると先の計算式により、贈与税は『41万円』と算出されます
41万円 ← (455万円 – 基礎控除 110万円)× 税率 15 % – 控除額 10万円
いずれの場合でも、贈与後の家賃収入は、土地の所有者ではなく、建物の所有者のものとなります。
Aさんの息子は、41万円の贈与税を一度納税すれば、それ以降は毎年720万円の家賃収入が得られることになります。
Aさんは、「建物」とともに「アパートの将来収益力」も、息子に贈与したことになるのです
この贈与の効果が高いのは、
土地の値段が高く(=家賃水準が高く) 、建物が古い(=贈与税課税の対象となる評価額が低い)物件です
つまり、家賃水準が高い地域で築年数が経過したアパートや賃貸ビルなどが当てはまります
なお、建築費のローン返済が終わっているかどうか、も重要です
ローンが残っていると『負担付贈与』とみなされ、建物が『時価』で評価することになってしまいます(時価からローンを差し引いた額に贈与税がかかります)
■ 売買でも同様の効果が得られる
なお、「贈与」でなく「売買」とした場合も、同様の効果を得ることができます
ただし、建物を贈与ではなく売却したAさんに“譲渡所得税”が発生し、購入した息子には不動産取得税と登録免許税などがかかります
また、親が中古投資物件を現金で購入し、その後、建物だけを子に贈与した場合も同様の効果があります
■ 贈与した財産が2500万円以下なら贈与税はゼロに!
贈与者が60歳以上の直系尊属で、かつ受贈者が20歳以上の子や孫であれば、『相続時精算課税制度』を利用することができます。
その場合、2500万円までは贈与時には非課税で贈与することが可能です(2500万円を超えると一律で20%の贈与税が発生します)
ただしこの制度は、相続が発生した際に、相続時精算課税制度で贈与した財産を、贈与時の評価額で持ち戻して相続税を計算することになります。実際に利用される際には、税理士等の専門家にきちんと相談して検討することをおすすめいたします
相続時精算課税制度を利用しない場合でも、年度を分けて贈与すれば贈与税は減少します
仮に今回の事例の建物を2分の1ずつ2年に分けて贈与した場合
贈与税は2年間で24万円となります。
もっとも、その都度、登記を行わなければならない、などの問題も生じます
不動産の贈与をお考えの場合は、ぜひ一度お問い合わせください。