#20 ”家なき子„が不動産を相続すると相続税が大幅に減少する?

相続人の人数に合わせて均等に資産を相続することよりも、1人が資産を相続してから代償分割する方が節税できる場合があります。

 

■ 3億円の不動産を3姉妹で均等に相続することに

東京の一等地に戸建て住宅を保有する一家がありました。この一家の家族構成は、父と母の間に長女、二女、三女の三姉妹がいます。

父は5年前に他界しており、その際は母親が自宅の土地と建物を単独で相続しています。相続財産は自宅しかなく、評価額は路線価に基づく自用地としての原則評価でおよそ3億円でした。

そして昨年、母が亡くなりました。長女も二女もそれぞれ結婚して持ち家があり、三女だけが母親の近くの賃貸マンションに住んでおり持ち家を所有していません。

母の生前から自宅は姉妹で均等に3等分するという了解事項がありましたが、三女が実家に対する思い入れが最も強く、「私が実家の不動産を相続したい」と言い出しました。長女も二女も三女が自宅を相続すること自体に反対ではありませんでしたが、3億円の不動産を相続するなら、その見返りとして他の姉妹に1億円ずつを支払うこと、つまり代償分割が条件となりました。しかし三女に2億円を支払う能力がありませんでした。

結局、共有で相続して直ぐに売却し、売却代金を均等に分けてこの相続は無事に終了しました。

 

この事例、相続税の点からすると、実は3人で自宅を相続するよりも、三女のみが相続した方が税額を抑えることができました。どういうことでしょうか?

 

 

■ 「小規模宅地の特例」の適用を受けられれば評価額が下がる

 

三女は唯一の“家なき子”なので、「小規模宅地の特例」が適用されます。

小規模宅地の特例とは、被相続人や生活を共にする家族(同一生計親族)の事業用や居住用の宅地について、一定の要件を満たす場合に、その宅地の評価額を減額することができるというものです。

本制度は被相続人が亡くなった後の遺族の生活に大きな支障が生じてしまうことを防ぐために設けられました。

居住用の場合であれば330㎡までは80%減額されるます。

 

今回の事例だと、(敷地制限がないとすれば)小規模宅地の特例が適用できれば、3億円の評価額が6,000万円まで下げられます。

 

今回の事例に当てはめてみると、

まず、遺産分割協議書上、三女が単独で実家の土地建物を相続します。

その上で相続税の申告期限まではその土地を保有し、申告期限後に売却します。

分割協議書には、三女の譲渡税控除後の売却額相当額程度を長女・二女に代償金として支払う旨を記載しておけばよいでしょう。

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